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徳島地方裁判所 昭和32年(行モ)1号 決定

申立人 友成士寿雄 外一三名

被申立人 羽の浦町選挙管理委員会

主文

申立人等の本件申立を却下する。

申立費用は申立人等の負担とする。

事実

申立人等代理人は「被申立人が昭和三十二年七月六日なした羽の浦町議会解散賛否投票に関する告示(羽の浦町選管告示第九号)の効力は当庁昭和三二年(行)第五号町議会解散請求者署名無効確認等請求事件の判決が確定するまでこれを停止する」との決定を求め、その理由とするところは、申立人等十四名は徳島県那賀郡羽の浦町議会議員であるところ、同町住民である村上悟外三名は羽の浦町議会の解散請求の代表者となつて同議会の解散請求運動を起し、被申立人から請求代表者たる所定の証明書の交付を受けて町議会解散の署名の収集を開始し、同町有権者総数四千六百二十名のうち、法定数を超える二千百五十一名の署名を得てその署名簿を被申立人に提出し、それに署名押印している者が選挙人名簿に有権者として記載されている者であることの証明を求めた、そこで被申立人はその署名の効力を審査してその署名を有効と決定してこれを証明し、昭和三十二年六月七日から関係人の縦覧に供したので、申立人等他二名並に申立人池田静雄が夫々同月十三日後記のごとき異議の申立をしたところ、被申立人は同月二十六日右の各異議はいずれも正当でないとして却下し、前記の署名数を有効と認めてこれを告示すると共に署名簿を解散請求代表者である村上悟他三名に返付した。しかしながら異議申立人等に対する被申立人の決定には次に述べるような重大な瑕疵がある。即ち、(一)請求代表者となつている村上悟は当時羽の浦町の常勤の嘱託員たる地方公務員として、地方公務員法第三条第三項に所謂特別職に属する者であつて、町当局住民間のあらゆる伝達、或は住民の実態調査、その他住民の利害関係に影響する公的な事務を担当していたのであるが法律の定めに依つて地方公務員はその在職中普通公共団体の議会の解散請求の代表者となることができないので村上悟は本件において請求代表者となることは許されない。そして請求代表者が数名ある場合にはその行為は全員の意思の合致に基く合同行為でなければならないから村上悟が請求代表者の一人として署名の収集手続に関与しているため右の署名簿の全署名は結局法令の定める成規の手続によらない署名としていずれも無効である。しかるに被申立人はこの異議に対しては、当時村上悟が地方公務員である嘱託員としての公務を処理していた事実を認めながら、只一時的に事務の一部を応急措置として処理していたのであるから公務員と言ふには当らない、との誤つた理由でこれを却下し、次に(二)請求代表者以外の者で署名を収集することができる者は請求代表者より署名収集の委任を受けて、これを当該普通公共団体の選挙管理委員会に届出た者に限られるのであるが、本件の場合は選挙管理委員会に何等の届出も無い請求代表者以外の者である同町或いは他町村の者に署名を収集させた事実があり、署名の収集にたずさわる者が多数存する場合には収集行為は全員の合同行為と解すべきものであるから、結局署名収集手続が法令に定める成規の手続に依らないものとして全署名が無効である。しかるに被申立人はこの異議に対しては、十分な審査によつて事実を明かにせず、単に請求代表者又はその代理人が署名を集めるに当り第三者を同伴したからといつても、それだけでその署名を無効であるとはいえない、との誤つた理由でこれを却下した。そこで、申立人等は同年七月五日、当庁に対して町議会解散請求署名簿の署名の異議申立に対する却下決定の取消を求める本案訴訟(当庁昭和三二年(行)第五号事件)を提起したのである。ところが他方村上悟他三名の請求代表者等は被申立人より返付を受けた署名簿によつて同年六月二十七日被申立人に対して町議会の解散を請求し、被申立人は同日これを受理して村上悟他三名から羽の浦町議会解散賛否投票の請求があつた旨法定の告示並に公表を行い、更に同年七月六日には同年同月二十八日に解散賛否投票を施行する旨を羽の浦町選管告示第九号によつて告示した。しかしながら、このまゝ推移すると右の本案訴訟の確定前に不当な投票が行われることになるのであつて、徒らに町住民の感情を対立、激化させて町政は混乱し、町民に対して償ふことのできない精神的物質的損害を与えることは明かであるのみならず、右投票の結果町議会が解散されることになれば、申立人等は議員たる資格を失ふことになり、住民の多数衆望によつて多年町政に参画して町議会議長或は議員として町住民の福祉増進と町の発展を念願とする申立人等の職責が一部住民の策謀によつて挫折せしめられ、その結果蒙る損害は回復することができない、そこで右の賛否投票に関する手続の進行を停止するため、前記の告示の効力の執行を停止して投票を行わせないようにする緊急の必要があるから本申立に及んだというにある。

(疏明省略)

理由

被申立代理人は申立人等の本件執行停止の申立は、別紙に添付した上申書に記載する理由により申立自体が不適法である、との意見を述べているからこの点を先づ検討する、この意見は、地方自治法に所謂議会の解散に対する直接請求の手続に関する争訟の方法が、地方自治法に直接規定される署名簿の署名の効力に関する訴訟と、公職選挙法に規定される賛否投票の選挙の効力に関する訴訟に二分されるところから直接請求の手続自体を請求代表者に対する証明書の交付より署名簿の返付に至るまでの手続と解散賛否の投票の請求より投票手続の終了に至るまでの手続の二段階に分け、行政訴訟特例法第十条第二項に規定する処分の執行停止については適法な本案訴訟が繋属することを要件とするところから右に所謂適法な本案訴訟とは執行の停止を求める行政処分の直接の効力を争ふものに限られると主張し、本件では先に述べた前者の段階に属する請求手続に対する争訟の方法としての前者の訴訟を本案訴訟としながら後者の段階に属する請求手続中賛否投票施行の告示の効力の執行停止を申立てるのであるから本件の本案訴訟を以てしてはこの執行停止の申立自体が本案訴訟と適合しない不適法な申立であるというのであるが、一般に行政訴訟特例法第十条第二項にいう処分の執行の停止とは被申立代理人が述べるごとく本案訴訟の目的たる当該行政処分の効力の発生を阻止するためにのみ限定して解すべきものではなく同一行政庁が行ふ関連した一連の行政処分であつて当該行政処分を前提とし、必然的に後続してなさるべき行政処分がある場合、その処分の効力の発生を阻止することをも含むものと解するのが相当で、本件の場合請求代表者となる者に対するその証明書の交付に始まる直接請求の手続は賛否投票手続が終了して投票の結果が確定したことを所定の関係者に通知、公表、報告することに依つて結了する一連の行政処分の連続であつてその間に署名簿の返付と請求代表者の賛否投票の請求との間には目的を異にする行政処分がなされているのではなく、且つ争訟の方法がこの一連の手続に対して二個の方法に限定されている趣旨も又一連の請求手続をこの二個の争訟により解決すれば足りるものとして定められたものに他ならず争訟の方法に依つて処分の執行停止を限定した趣旨ではないと解すべきである。このように検討してくると本件申立はそれ自体不適法であるとの意見は正当として採用し得ない。そこで申立人等の主張が許容されるか否かを更に検討するに、申立人等の主張事実中、その主張のような取消訴訟が当庁昭和三二年(行)第五号町議会解散請求者署名無効確認等請求事件として繋属していることは当裁判所に顕著な事実であり、申立人等他二名並に申立人池田静雄の被申立人に対する各異議申立に就いては申立人等主張のごとき理由を以て却下されている事実並に本件の直接請求に関する請求代表者の一人として村上悟が行為していた事実は申立人等提出の各疏明資料を綜合して明らかにすることができる。しかし、本件の署名収集の手続に申立人等が主張するような法令に定められた手続を履践していないと認められる瑕疵が存するか否かを疏明資料についてこれをみるに、前記の(一)の異議の事由となつた事実については、村上悟が任命権者たる羽の浦町長より嘱託員として任命せられた上地方公務員として嘱託員の事務に属する事務を処理していたことの疏明が未だ十分とはなし難く、従つて同人が請求代表者の一人として署名の収集をなしたことからその署名簿の署名は法令の定める成規の手続によらないものとしての瑕疵を持ち無効であるとの主張事実の疏明が無いものと言はねばならない。

更に(二)の異議の事由となつた事実については、全疏明を以てするも、選挙管理委員会に何等の届出も無い請求代表者以外の者である同町或いは他町村の者に署名を収集させている事実を認め得るものがない。そこで本件申立の基礎となるべき事実が上述のような疏明の程度である以上その余の申立理由を判断するまでもなく、町議会解散の賛否投票施行の告示の効力の発生を停止して投票の施行を阻止することは行政事件訴訟特例法第十条第二項の要件を具備しないと言わざるを得ないから許されない。

よつて、申立人等の本件申立は理由がないからこれを却下すべきものと認め申立費用の負担については行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 宮崎福二 山中孝茂 渡辺敏久)

上申書

申請人  友成士寿雄 他一三名

被申請人 羽ノ浦町選挙管理委員会

右当事者間の御庁昭和三二年(行モ)第一号解散投票告示執行停止決定申請事件について、被申請人は左の通り意見を申し述べます。

申請の趣旨に対する意見

本件申請を却下する旨の御裁判を求める。

申請の原因に対する意見

一、本件申請は不適法である。

議会解散請求の手続は大きく分けると二つの段階に分れる。第一は請求代表者証明書の交付から署名簿の返付まで、第二は解散の投票の請求から投票手続終了までで、前者についての争訟は地方自治法(以下単に法と略称する)及び地方自治法施行令(以下単に令と略称する)に直接規定された方法により、後者についての争訟は法第八五条第一項によつて準用される公職選挙法に規定された方法により夫々行うことになつている。

その結果投票の告示から解散の投票に至るまでの一連の連鎖的手続の一部又は全部に異議がある場合は、所謂選挙争訟(当選争訟に対立する意味の)として公職選挙法第二〇二、二〇三条に定める方法により最終の投票後に解散の投票の効力につき争訟を行うことができ、途中の段階の個々の手続に対して争訟をなすことはできない。尚且つ、右争訟については、令第一〇九条において公職選挙法第二一四、二一九条の準用が除外されている結果、行政事件訴訟特例法(以下単に特例法と略称する)第一〇条第二項による執行停止の途が開けているのである。

而して、本件においては、署名簿の効力に対する異議却下決定の取消及び署名の無効確認を本案訴訟として投票の告示の効力の停止を求めているのであるが、特例法第一〇条第二項による執行停止については適法な本案訴訟が係属していることが第一要件となつており、右本案訴訟とは、停止を求める行政処分の直接の効力を争うものでなければならない。換言すれば、投票の告示の執行停止を求めるのであれば本案訴訟は、当該告示の無効確認を求める趣旨のものでなければならない。ところが、このような争訟は公職選挙法では許されないのであつて、結局公職選挙法第二〇二、二〇三条に定める方法により解散投票無効確認訴訟を本案訴訟として、解散投票の効力の執行停止を求めるという方法をとらなければならない。

勿論申請人の提起しているような本案訴訟はそれ自体は適法な訴訟であるが、それはそれで独立して訴訟手続を進めればよいのであつて、投票の段階に入つた以後の手続に対しては、公職選挙法に定める方法により争訟を進め執行停止を求めなければならない。令第一〇九条において公職選挙法第二一四、二一九条の準用を除外した法意はそこにある。

よつて本件申請は不適法として却下されるべきである。

二、仮りに本件申請が適法であるとしても、その基礎となる本案請求が理由がなく且つ疎明もない。

およそ行政処分の執行停止は保全的性質を有するから執行停止をするには本案請求が法律上理由ありと見え且つ事実上の点について疎明があることを要する。

東京高等二八、七、一八判決(行政事件裁判例集四巻七号)その他申請人の主張する請求原因は、(イ)請求代表者の中村上悟が地方公務員(嘱託員)である(ロ)第三者が署名を収集したとの二点であるが、何れもその事実はない。

(1) 羽ノ浦町元町地区の嘱託員は山本寿義であつて、村上悟ではない。右山本から町長に対して辞任を申出たこともなく、又右村上を後任者として推薦して来たこともない。勿論町長が村上悟を嘱託員に任命したこともなく又嘱託員の事務取扱を委嘱したこともない。(地元において村上を山本の後任予定者としてとりきめておつたかもしれないが町当局に申出がなかつたので町長は全然そのような話を知らない)従つて右村上悟は、地方公務員法第三条第三項第三号に掲げる特別職の地方公務員に該当しない。

(2) 第三者が署名を収集したというが、申請人は何等具体的事実を示さない。

尤も、疎第一号証の二異議申立に対する却下決定通知書には、第三者を同伴しても何等無効の理由にはならないとして、最高裁判所昭和二八年(オ)第一八号事件判決(同年六月十二日言渡集第七巻六号)を引用して却下理由を説明しているが、これはいささか説明不足であつて、実情は、請求代表者が羽ノ浦町持井地区の有権者の署名を求めに行くについて、同地区は昔より隣接の富岡町(旧大野村)持井地区と境界が入り組んでおり、土地不案内のため知人に案内人となつて貰つたに過ぎないのであつて、第三者を同伴したのではない。尚仮りにこれが同伴に該当するとしても署名無効の理由にはならないとの意味である。

以上の次第で申請人の本案請求は理由がないから本件申請は却下されるべきである。

三、本件申請は、特例法第一〇条第二項に定める緊急の必要性がない。

申請人のこの点に関する申請理由は、(イ)不当な投票の強行はいたずらに町民の感情を対立激化せしめ町政を混乱せしめる。(ロ)申請人等が議員の資格を失う、との二点であるが、第一点は後述公共の福祉の項に述べる。第二点については、前記一項に述べたよに本件告示に始まる一連の解散投票の手続が進行し、投票が終了したとしても、申請人等にとつては投票の効力に関する争訟並びに執行停止の途が開けており、又その方法をとるのが法の規定するところである。

尚又告示の効力が停止されない場合でも、申請人等がわれこそは町民の代表者であり町民多数の支持を得ていると信ずるのであれば、却つて堂々と信を天下に問えばよいし、又解散となつた場合はこれに続く議員選挙に立候補して新議員に当選し、解散投票及び選挙の無効確定に至るまで新議会において議員としての職務を執る機会を失わない。而も解散投票並に選挙の無効が確定すれば、申請人等ははじめから議員の地位を失わなかつたことになる。

以上の理由により、本件解散投票が執行されても、申請人等にとつて償うことのできない損害は生じない。

参考 松江地方二七、七、二一判決(行政事件裁判例集三巻六号)

四、本件投票告示の効力を停止すれば、公共の福祉に重大な影響を及ぼすこと明かである。

これを説明するに先だち、被申請委員会は、所謂小松島派と那賀川派の何れにも偏しない中立の立場に立つていること、及び以下に述べる事実は、羽ノ浦町民公知の客観的事実に基くものであることを明言する。

昭和二十八年に町村合併促進法が施行されて以来徳島県下においても次々に町村合併が行われたが、那賀郡北部において相隣接する羽ノ浦町、今津村、平島村の合併がなかなか実現しないので、徳島県知事は、右促進法の失効する昭和三十一年九月三十日を最終目標として右三ケ町村合併の勧告をしたが遂に協調ができず今津村、平島村の両村のみで右九月三十日に合併し那賀川町として発足した。

一方政府は町村合併促進法に代えて新市町村建設促進法を施行し、徳島県知事は同法の規定により昭和三十二年三月三十一日を最終目標として羽ノ浦町と那賀川町との合併をあつせんし、羽ノ浦、那賀川両町はこれにこたえて合併案を討議し、遂に合併協定の成案を得たので、その結果徳島県知事は、昭和三十二年一月十六日羽ノ浦、那賀川両町に対して正式に合併勧告文を交付した。

そこで羽ノ浦町長は、同月十九日右合併案の承認を求めるため臨時町議会を招集した。

この時の議員総数二十二名の内、那賀川町との合併にかねて賛同している者(那賀川派)十二名、之に反対して小松島市との合併を主唱する者(小松島派)十名で、その中、議長友成士寿雄(本件申請人)は小松島派、副議長植田福七は那賀川派、尚、町長有吉豊は那賀川派であつた。

右のように那賀川派が過半数を占めていたが、当日の議会は、議長を擁する小松島派の強硬な反対により議事進行せず流会となつた。

次いで同年三月二十九日予算案審議のため議会が招集されたが、その直前に那賀川派の中の六名が小松島派に合流し、小松島派が十六対六と絶対多数を占めるに至つたので、当日小松島派が議員提案として小松島市との合併案を提案し一気に可決せんとする気配が見えたらしく、那賀川派は冒頭議長不信任案を提出し、議長の降壇を求め、これが原因で乱闘がはじまり、議長は議長席より連れ出され、その代りに植田副議長が議長席に座り、結局混乱のうちに副議長が閉会を宣言し町長及び那賀川派議員は退場した。然し小松島派は右閉会宣言が無効であるとの見解により、十六名だけで小松島市との合併案を可決する旨宣言した。

右閉会宣言並に小松島市との合併決議の効力については今尚両派の意見が対立しているのであるが、小松島派は、小松島市との合併決議が有効であるとの考えから町長に対して之が執行を要求し、他方町長は、前記閉会宣言は有効だが、小松島派が多数を占めるかぎりもし議会を招集すれば前述のような議員提案の方法で小松島市との合併案を上提可決されるであろうと考えたらしく、その後小松島派の要求があつても議会を招集せず、遂に四月、五月の予算は町長の専決処分で暫定予算を執行した。

右の状況で三月二十九日以後は正常な町議会は開催されず、町長の専決処分という変則な方法で行きあたりばつたりの町政が行われ、重要な案件は全然審議できず町政は全く麻痺してしまつた。

そこで県当局及び県議会が、ともかく予算のみは可決しなければならないとして両派の仲裁に入り、その結果、予算案の審議のみで他の議案は出さないとの協定ができたので、五月初め頃議会を開き、昭和三十二年度予算案のみをようやく可決した。その後は相変らず両派の対立が激しく、議会は開かれないので、その他の議案は依然として審議できない有様である。

このような事態になつて最も迷惑を蒙つたのは町の住民であり、こゝにおいて町民の間に町長と議会に対する非難の声が高まり、この際町長も議会も総辞職して選挙をやり直せという意見が多くなり、その現われとして、ほぼ同時に議会と町長のリコールが開始され、何れも法定数をはるかに上廻る署名を得たのである。(この中には双方に署名した者が八五九名いる)

右署名簿に対して双方夫々被申請委員会に対し異議の申立があり、何れも審議の結果理由がないので却下し、引続いて双方夫々解散請求及び解職請求がなされ、被申請委員会は、昭和三十二年七月六日附で右解散投票及び解職投票の投票日を共に同月二十八日と定め告示した。

右の次第で現在の町政の行きづまりを打開するには右二つのリコール以外に途はなく、大多数の町民は投票日の来るのを待ちこがれているのである。

若し投票告示の効力が停止されれば、訴訟が完結するまで百日、若し上告すれば数年を要し(現議員の任期満了までに完結しないかもしれない)その間町政の空白、混乱、両派の対立はますます激しく続くことになるのみならず、大多数の町民の希望は失われ、民心は動揺し、どのような不祥事が起るか、はかりしれないこと明白である。

尚又、議会の解散投票のみ停止されて町長の解職投票は停止されないという結果になるとますます町政の混乱、民心の不安を激化せしめること明白である。

以上の理由により、本件執行停止は公共の福祉に重大なる影響を及ぼすこと明白であるから却下されるべきである。(疏明書類並に附属書類省略)

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